<これから始まる>

 やがて、「お開き」の合図もないまま、新郎・新婦と別れの挨拶を交わした招待客が、順々に会場をあとにしてゆく。自然に潮が引くように、パーティーはフェイドアウトしてゆくのだ。

 セレモニーは終わった。長い、長い、長〜い一日だった。豚まん餃子も、ラクダ・ライドも、4時間待機も、式も料理もダンスも、みんな今日一日の出来事だ。これで明日が帰国、と言われても納得しそうなほど充実した一日だった。かといって、明日帰るわけには行かない。飛行機がないのだ。いや、そういうことではなくて、私たちは昨夜パキスタンに着いたばかりなのだ。今日は、いわば体ならし。これからが本番だ。

 さあ、明日から決死のパキスタン地獄めぐり探検旅行が始まるぞ。スケジュールはびっしりだ。しかし、今は何も考えず眠ろう。私の神経もそろそろ限界に近づいている。日本からこっそり持ち込んだ紙パック焼酎も、今夜は必要なさそうだ。

 恐怖と戦慄の1週間は、まだ、夢の向こう側だ。