<大は小をかねる>

 明けて日曜日。いよいよ結婚式だ。集合時間は6時半。まだ半日あるぞ。カラチ滞在は今日一日だけだ。市内観光しないでどうする。いや、あのね。

 タクシーをチャーターし、まずはパキスタン料理で腹ごしらえ!のつもりが日曜でどこも閉まっていたため、やむなく中華料理レストランに入る。テーブルについた私たちはなんとなく沈んでいた。みんな同じ事を考えていたのだろう。「なんでパキスタンに来てまで中華料理を・・・」 

 しかし、目の前に料理が運ばれてきたとたん、みんなの顔はだらしなくゆるみ、口を半開きにしてエヘエヘと気色の悪い笑いを浮かべている者さえいた。その笑みが、次の瞬間、爆笑へと移行した。

 人間は異常にでかいものを目にすると笑ってしまうという習性があるらしい。餃子である。メインが来る前に、とりあえずノン・アルコールビールのつまみにしようと、一人2個ずつ当たるように注文した餃子が、「551」の豚まんほどの大きさなのだ。テーブルの上の巨大な豚まん餃子は、ハシをとるのも忘れて、しばし呆然と見守る私たちの視線などおかまいなしに、ほくほくと機嫌良く湯気を立てている。豚まんみたいな餃子に手を伸ばすのは、なぜか照れくさい。やがて、空腹に負けた一人がおそるおそる手を出し、がぶりとかじる。

 「うっま〜い!!」の一声を合図に、他の者がいっせいに豚まん餃子にハシをのばす。あとはもう、どうにも止まらないリンダこまっちゃうわ、の世界である。次から次へと運ばれてくる料理に、みんなハイエナのようにくらいつく。

 「麺類とご飯類も一口欲しいな」という全員一致した意見により、一人前ずつ注文してあった焼きそばと焼きめしが、ラスト近くに登場。豚まん餃子の強烈な先制パンチを食らって、肉や魚の一品料理でなんとか中盤戦を持ちこたえた私たちは、最後に「巨大焼きそば」と「巨大焼きめし」の二大攻撃でとどめをさされてしまった。立食パーティーなどで料理が盛ってあるあの大きなトレイのような皿である。そこに一粒・一本の乱れもなく、見事な山形に盛りつけられた焼きそばと焼きめしは、見る者に感動すらあたえる。

 まちがって人数分盛ってきたんじゃないか?あとで伝票を確認したが、やっぱり間違いなく一人前だ。最初の豚まん餃子といい、焼きそばといい、焼きめしといい、察するところ、パキスタン人は炭水化物モンはたくさんなければ承知せん、という性格らしい。