その(2)
1999.01.18 <オグ>
宇宙人は言った。
「ぶひ〜〜ん、ぶひぶひぶっひん。ぶひぶひ、ぶっきき、ぶっひん、ぶはぶは、ぶほ〜ん?」
(な〜んや、そうやったんかいな。ところで、動物は飼い主に似る言うのは、ほんまやな。よー似とるな、お前と)
「ぶっき〜〜ん、ぶばぶび、ぶほほ〜〜ん」
(なんやて、こんな奴と俺が似てるか、あほ言え)(以下、しんどいから、ロバ語を省略する)
「そやんけ。耳の付き方と言い、鼻面の出方と言い、よう似とる」
「こら、お前舐めとんのんか。なんで俺が家畜に似なあかんねん」
「まあまあ、落ち着いて。俺はそいつがお前にそっくりや、言うただけやで。別にお前がこいつに似てるとは、、、、」
「どっちでも同じことやんけ。失礼なやっちゃな。」
「そないに怒らんと、、、ん? なんか臭うな。」
「言われてみたら、、、そやな。あああっ!」
ろばが振り向くと、ロバが小便を漏らしていた。あまりにエイリアンの姿が恐かったからだ。ろばは舌打ちして言った。
「しゃーーーないやっちゃな。客人の前で。」
宇宙人は笑って言った。
「気にせんでええで。訳のわからん獣のやったこっちゃ。」
「せやけど、おかしいな。こいつ普段やったら、こんな時には自分の皮を剥いで、別の皮を張り付けよるんや。」
「なんやて! とんでもないやっちゃな。そんなことしたら痛いがな。」
「そーーなんや。そう思うやろ。けどな、こいつ平気なんや。新しい皮を張りつけた後なんか、気持ちよさそうにしよるで。」
「気持ち悪いな。けど、恐いもの見たさっちゅうのもあるな。」
「見たいか?」
ろばが歯をむき出して笑いながら聞くと、宇宙人は音を立てて唾を飲み込んだ後、頷いた。
「おいお前、ちょっと見せたれや。」
ろばが言いながら、ロバに近づいた。ロバはろばの背荷から着替えを取り出した。先から着替えたかったのだが、ろばの側にいるエイリアンが恐くて近寄れなかったのだ。ロバは大慌てで、服を脱ぎ始めた。
「うわわわっわった!」
宇宙人はそのあまりに凄惨な光景に目を閉じてしまった。次に目を開いた時には、もうロバは新しい服を着ている。ろばはにやにや笑いながらエイリアンに聞いた。
「どや、すごかったやろ」
「えらいもん見てもうた。今晩、うなされそうや」
宇宙人は青ざめた顔で、呟くように答えた。
「おいおい、こんなことで驚いてたらアカンで、ほれ、見てみ。」
ろばの言葉に釣られて、ふとロバを見たのが運の尽き。エイリアンはつい先に食べた昼ご飯をげえげえ吐き出した。
「あはははは、びっくりしたやろ。こいつ蹄も自分で剥がしよる。」
ロバは代わりの靴を持っていなかったので、そのまま裸足でいた。
「なんとかしてくれ」
エイリアンは悲鳴を上げた。
「はよ、そいつにもう一度蹄を付けさせてくれ」
「だらしないやっちゃな。まだまだ、ほかにもあるで。」
「もおええ、もおええ。止めてくれ。」
「そおか? とっておきの奴があったのにな。」
「とっておきの奴て、、、なんや?」
エイリアンは口元に垂れたへ吐を拭いながら、恐る恐る尋ねた。止めておけば良いものを、魔が差したように、好奇心に取り付かれたのだ。
「こいつな、瞼も取りよるねん。」
エイリアンは涙を流し震え始めた。首をいやいやと振りながら、懇願するようにろばを見つめた。けれどもろばは残酷な笑いを浮かべてロバに命じた。
「お前、見せたれや。」
折りしも、日が暮れ始めていた。ロバは周囲が急速に暗がりに包まれて行くのを見て、サングラスを外した。
宇宙人の飛び乗った宇宙船が急上昇したのはその直後だった。太陽系から数万光年の彼方からやってきたエイリアンはかくして地球侵略に失敗したのだった。
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だれか続き書かへんか。