ざりがにその後

 

 11月某日:ざりがにのチビで水槽の中一杯や。スルメをちぎって入れたったら一勢に群がりよった。飴玉に群がってる蟻みたいや。

 11月某日:あれ、水槽の中にチビざりがに居れへんやんけ。どないしたんや。よう見たら、母ざりがにの腹にみんな戻っとおる。母ざりがにの動きがこのところやけに活発になってきよった。水槽をよじ登ろうとしてるみたいや。

 11月某日:母ざりがに、家出した父ちゃん追いかけて逃亡するつもりか。

今日も腹に子供抱えて、一段と動きが活発や。空気プクプクの装置の上に乗ったかと思うと両手(両ばさみやな)を上に掲げよる。しばらくしたら、空気プクプクの空気ホースをよじ登り始めよった。何回もトライしよるけど、水槽の淵まではとうとう到達でけへんかった。子供達をこんな小さい水槽の中で暮らさせるわけにはいかん、新天地を求めて脱走するんや。なんかそんな意気込みが感じられていじらしいなってくるで。なんとか逃がしたろか。服部緑地か、鶴見緑地かどっかで放したろか。でも服部緑地の池は震災の後、池の水全部抜いて、カラッカラにしてから護岸工事やりよったからザリガニの住む所やないしな。鶴見緑地は更に人工的やしな。ざりがに放すような場所やないな。それに今の時期に放すにはチビさん達にはあまりにも寒すぎるで。

 友達とざりがにの事話しとったら、それやったら宝塚ファミリーランドが一番ええ、っちゅう意見が出てきた。確かに人工的やけど、きれいな水がチョロチョロ流れる様なところなんぼでもあるし、あの中来てまでざりがに捕まえるやつもおらんやろうから、却って安全ちゃうか、ちゅう意見や。放したついでに「ざりがにランド」の看板立ててきたらええねん。案外新しい名所として、保護してくれるかもしれんで。

でも、一番多かったんは、そら大きくなるまで育てて、「ざりがにパーティ」しようや。ちゅう意見や。

ちなみにスウェーデンでは「ざりがにパーティ」ちゅうのは有名らしい。

スウェーデン日本大使館のホームページにも紹介されとる。

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 スウェーデンの夏の風物詩のひとつに「ざりがにパーティー」があります。この国とざりがにの歴史は古く、既に1500年代には近所の小川で採ったざりがにを食べる習慣があったといいます。しかし、1860年代にざりがに禁漁期間が定められたことに伴い、解禁日が設定され、それ以降、解禁後、戸外で歌を歌いながらアクアビット(穀物から造る蒸留酒)片手にゆでたざりがにを囲んでパーティーを開くのが

夏季には欠かせない行事となりました。当国の国民的画家、カール・ラーションもざりがにを採る子供達の風景を描いています。

 その後ざりがに解禁日はなくなり、年間を通じてざりがにの販売が合法となりましたが、夏の「ざりがにパーティー」は今後もスウェーデン人の心に深く刻み込まれた生活詩として長く続くことでしょう。

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 11月某日:チビざりがに達が、再び母ザリガニの腹から飛び立つ。

 12月某日:母ざりがに、突然死。原因不明。脱走が無理と分かって、精神的ダメージが強すぎたか。

 12月某日:水槽の中の水が濁ってきて、中の様子が見えないくらいなので、久しぶりに水を替える。

水を替えるに当たって、水槽の底を掃除していたら、わずかの期間に何回も脱皮を繰り返していた事が分かる。

 1ヶ月ちょっとの間にかなり大きくなっている。ありゃりゃ、こりゃなんや。

他のザリガニはまだ、1.2cmか1.5cmくらいやのに一匹だけ3cmくらいのやつおるやんけ。

体長だけでは2倍ちょっとやけど、全体の大きさは5倍くらいほかのやつより大きいみたいに見える。

どないなってんねん。突然変異か。彼の事を巨大クンと命名する。

それにだいぶ共食いしたんとちゃうか。かなり数が減った様な気がする。

 1月某日:巨大クンの脱皮した抜け殻を発見。測ってみると、6cmになっとった。

 1月某日:とうとう巨大クンが他のチビをむさぼり食うてんのを目撃。

巨大クンの居てる水槽の方の他のチビは、巨大クンの攻撃ではさみは無くなっとるわ、足は無くなってもうとるわ、もうカタワもんばっかし(放送禁止用語ですな)になってきよった。

中にははさみも足も一本も無くなって胴体だけになってもがいてるやつも居てるわ。

 1月某日:巨大クン用の水槽を一つ購入。巨大クン一人だけやったら、寂しいやろうから、他にも3cm超えた準巨大クンを何匹か一緒に入れる。

 2月某日:巨大クンの水槽から毎晩一匹ずつ減って行きよる。とうとうNO.2とNO.3の三匹になる。

 2月某日:巨大クンがNO.2をむさぼり食うてんのを発見。とうとうNO.3と2匹だけに...