その(九)
「気ぃつけろ。ここからが外国人立ち入り禁止地域や」
「そうか。ほなもうすぐアフガン国境やな」
「いや、まだまだやで。ここからだいぶ登った先や」
「ごっつい検問所あるぞ」
「よっしゃ、あの裏手から行こか」
「あの検問所見てみーな。みんな子供みたいな連中がカラシニコフぶらさげとるで」
「なんかあいつらがぶるさげとっても全然違和感無いな」
「ああ、なんかブラジルの少年がサッカーボール扱うてるみたいや」
道ばたに密輸品のバイヤーが商品の段ボール箱を置いている。
「あいつら、売る気あんのかいな。段ボールだけ置いてても何売ってんのかわからんやんけ」
「いや、わかるやつにはわかるんやろ。ほら、サンヨー電気って書いてあるで。あの箱」
我々一行は検問を逃れ、険しい道を進んで行く。
「お、なんか後ろの方で騒いどるぞ」
「強引に検問突破を試みたやつがつかまったんかいな」
「あいつ、間違いなしに銃殺刑やろな」
「もうすぐ小さなヴィレッジがあるはずや。危険な部族やから気ぃつけろよ。
ええか、女はみんな頭も顔も隠すんやぞ。
なんせ、この辺の連中は女ちゅうたら強奪するものとしか考えて無いからな」
「なんか、この周辺の連中は顔がキリッと締まっとる感じするな。精悍な顔立ちっちゅうのか」
「ほんまやー。男前ばっかし」
「こら、顔出すな」
「子供もなんか誇り高い顔してるで。間違ってもカラチのガキみたいに物乞いなんかしそうに無いな」
「もう一息やぞ。もう一息でハイバル峠や。ここ数年一般の外国人はこの辺に立ち寄って無いはずや」
「ほら、見えて来たぞ。あそこがアフガン国境線や」
「最近も国境近くで紛争が・・・・えっ何あれ」
『はーい皆さ〜ん。この辺で写真を撮りましょう』
「いったいどないなってんねん」
「なにーよ。女の人誰も顔なんか隠して無いやんか」
「なんや、まぼろしか?日本人のツーリストやな。えらい年とったおっちゃん、おばちゃん軍団もいてるで」
『はーい皆さ〜ん。車に戻ってくださーい。お昼ご飯にしましょう。お昼ご飯はこの手前のヴィレッジでとりま〜す』