その(二)
「着いたで」
「もう着いたか、遠い国やとばっかし思てたら案外近いもんや。早速カラチの明太子でも食べよか」
「どこに着いたと思てんねん、まだバンコックや。バンコック」
「え、ちゃうんかいな、カラチイな〜〜〜!!」
やれやれ、漫才コンビはネタ作りに余念が無いのう。
こんだけ一生懸命やってんのに売れへんもんは売れへんねんなあ。
バンコックは朝の5時、カラチ行き発は19時や。たっぷり時間あるやんけ。
ちょっとバンコック散歩しよか。
「着いたで」
「今度はどこや」
「なんか有名な寺院らしいで」
「日本でも寺なんか行った事無いのになんでそんなとこ選んだんや」
「なんか有名やから・・・」
「・・・・・・」
着いたんはええけど、まだこの寺院開店前やんけ。しゃーない朝飯食お食お。
「着いたで」
「どこに?」
「メシ屋や。メシ屋や」
「どこがメシ屋やねん。こんな犬が寝そべってる様なとこで食うの嫌やで」
「これも漫才の修行や。辛抱せい」
そこは、土方のオッチャンが朝飯かき込みにくる様なきちゃない店や。
観光客なんか珍しいんやろな。
店の人も客も珍しそうに見よる。
外から見たらメン類の様に見えたんやけど、中身はなんかの動物の臓物ばっかし。
これがまた、うまい。
「着いたで」
「えっ?」
「漢字間違うた。付いたで」
「そやから何が?」
「お前の鼻にハエが一匹」
どうでもええけど、そのネタあんましおもろ無いで。
「さいでっか」
「ほな〜サイナラ」
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