その(四)

 

「おーっとこの運ちゃん、ごっついスピード出しよんな」

「ほんまや。暴走族あがりちゃうか」

「うぁーっ信号、赤や、赤。つっこんで行きよんぞ」

「むっちゃしよんなー」

「こんなやつ大阪にもなかなかおらんで」

「だいたい、お前が前の車に付いていく様に言うたからこないなったんちゃうんか。

 行き先のホテル言うてんから、いらん事言わんでもええのに」

「そうか、このおっさん融通のきかんタイプやねんな。

 案外、根は真面目なんかもしれん」

「しかし、道路にライン引いたあるのに一台もそのラインの中走ってる車が無いちゅうのもなんかすごいな」

「おーっとっとっとと。びっくりしたぁ。

 センターラインオーバーして対向車線に入ってまでして追い抜きかけよったで」

「ぎりぎりやったな。もうちょいで正面衝突や」

「そやけど、おっさんの顔見てみ。涼しい顔して運転しとるわ」

「うわー。こんどはバッシングや。のけのけのけ〜、いう感じやな」

「そやけど、このおっさんのテクニックすごいんちゃうか」

「今のオーバーライン追い越しもすれすれやったで。結構見切っとるぞ」

「そうか。運転免許とりたてとちゃうんかい。運転出来てうれしいてたまらんだけやろ」

「あほ、免許制度がどうのちゅうお国柄かぇ。そんなんよりわしらの話が分かるんちゃうかい。がぜん張り切ってきよったで」

「運ちゃんなんかぶつぶつ言うとんぞ」

 

  『・・・・・・・』

  『あほか。こいつら。こんなんでびびっとんのかいな。

   なんやったらもっとびびらしたろか』

 

「うわーっぶつかる!」

「ほぅーっ助かった。お前保険ちゃんと入って来たか」

「あほ、そんなん言うてる場合か。死なんようにシートベルトでもさがせや」

「そんなもんあるかいな。窓かて半空きのまま動けへん様なボロ車やのに」

「フロントガラス見てみ。あれ銃弾の後やで」

「やっぱりヤクザか」

「あほ、このおっさんがヤクザやったらこの国の連中、みんなヤクザやんけ」

「さっきの飛行機の中の騒動見たやろ。あんな大騒ぎ、大阪のヤクザでもせーへんで」

 

  『・・・・・・・』

  『けっ、日本とか言う世界のど田舎から来た連中が何ぬかしとんじゃい。

   ここは世界の大都会カラチやぞ。お前らのくそ田舎と一緒にするな』

 

 

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